また安藤忠雄氏講演会が秋田で開催 … 新美術館建設は誰のためのものか?

  著名建築家の安藤忠雄氏は、あるインタビューの中で、国の補助金交付金が日本の地方都市を危機的状況にしている原因の一つだと答えていたことがあった。一方で、安藤氏自身は、巨額の公的な補助金交付金が投入されている再開発事業に多数参画していることが知られている。国内では、東京都調布市茨城県水戸市の再開発事業、東京都「表参道ヒルズ」、山梨県JR竜王駅と駅前広場の設計を担当するなどし、大阪市のJR大阪駅北側の再開発事業にも今後関わる予定だと言うことだ。海外ではオイルマネーで資金が潤沢な中東のバーレーン、アラブ首長国連邦や高度経済成長の中にある中国・上海などの大規模プロジェクトに参画している。発言と現実の間に食い違いが見られ、巨大利権がある大規模事業の存在するところに頻繁に登場する建築家でもあるようだ。
 この安藤忠雄氏の講演会が、7月22日に、県の主催でまたもや秋田市で行われると言う。安藤氏の講演会は、昨年7月8日にもあったばかりで、県の主催ではなかったが2009年5月10日にも秋田市であった。新秋田県立美術館の設計者であったと言う理由からだと思うが、これほど頻繁に行われると、この新県立美術館の新築は、一体何のため、誰のためのものであったのか、改めて考えさせられる。美術館の主役は建築家や建物ではないはずだ。また、安藤忠雄氏は講演会の出演が非常に多い人でもある。無論、依頼を受けたからであろうが、今年の4月〜6月だけで、予定も含め、17件の講演を行っている。調べてみると、昨年一年間だけで74件の講演会に出演している。講演料は1件あたり100万円〜150万円が目安のようなので、かなりの高額だ。年間では7400万円〜1億1100万円になると言うところか。講演会と再開発事業や美術館建設がセットになって開催されるケースも多い。山梨県北社市、清春芸術村の「光の美術館」建設でも昨年の完成記念講演に続き、今年4月29日に開館1周年記念講演会まで行われている。特定の建築家を偏重する風潮は改めるべきではないか。剥き出しのコンクリートが特徴の建物に好感を持てない人も多い。新しい街づくりの主役は、建築家でもなければ建物でもないなずだ。新秋田県立美術館の建設は、「安藤忠雄氏なら進めたい」と前知事が発言し、県民の見直し要求を聞かず、現知事が「安藤氏による計画を白紙にすれば、県の信頼が失われる可能性がある」と主張し進められたものだ。秋田市のこの再開発、新美術館建設は誰のためのものであったのか。

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